福山市立大学
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在学生・教職員の方

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「第56回中・四国保育学生研究大会」へ参加

INFO 2015年11月30日

「ぼくたち わたしたちは わすれない」

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「ぼくたち わたしたちは わすれない」
 11月22日(日)、広島文教女子大学(広島市)で開催された第56回中・四国保育学生研究大会(中・四国保育士養成協議会主催、約1000人参加)にて、教育学部保育コース2年生48人と教育コース2人(「保育内容(表現A)」履修者)が研究発表を行いました。本学としては開学以来四年連続の参加ですが、福山市立女子短期大学以来保育研究の伝統を継承する発表は、講評にてテーマの普遍性と総合表現としての質の高さが認められたように、見る人の心に迫るものとなりました。

本学では、1年次開講科目「運動・身体表現Ⅰ(基礎)」「運動・身体表現Ⅱ(応用)」の中で、発達段階に応じた表現教材を数多く実践的に学び、2年次開講科目「保育内容(表現A)」で子どもの発達との関係を領域横断的に考察しながら表現指導法を学習します。これまでの学習の集大成として、戦後70年目の今年は短大時代より大切に受け継いできた本学オリジナル平和教材(被爆アオギリ紙芝居「そばにいるよ」、福山空襲を題材にした紙芝居と歌「母と子の八月八日」)に託されたメッセージを子どもたちの心に届ける総合表現教材として再構成し、この教材に触れた子どもや大人自身が、平和を作り出す主体であることを追体験できるものにすべく取り組んできました。

世界に目を向けてみると戦争や紛争は絶えるどころか各地で激化する一方で、日本でもほんの70年前、子どもたちは戦争の恐怖を体験しました。現在では戦争体験者も減少の一途をたどり、戦争の実相を直接聞くことが難しくなっています。今回広島平和記念資料館、福山市人権平和資料館にも足を運び、体験者から直接話を聞くなど教材の背景となった当時の状況について理解を深めようとしました。戦争は一瞬にして日常や子どもたちの未来を奪ってしまう、平和は誰かが作ってくれるものではなくあの時代を生きのびた人々から渡された平和のバトンを次世代へときちんとつないでいくための教材開発を目指しました。

命の大切さを軸に、手・体あそびは手指操作・全身の発達に寄与し(領域「健康」)、木や子どもが主人公の話であることから自然や人と関わり(「環境」・「人間関係」)や、語り部の方々の言葉や歌の意味(「言葉」)を理解し、感じ取ったイメージを体・歌で表現し伝える(「表現」)という、5領域との関連を考慮し、世代を越えて体験が継承され心に刻まれるよう、ポイントとなる部分については、立体的な大道具(福山城・母子三人像)や様々な表現方法(爆風・サイレン・炎等)を駆使して五感に訴える演出の工夫を試みました。また、時代考証をかさね防空頭巾を手作りする、登場人物の年齢・性別に沿った表現を模索するなど、史実に基づきリアリティを追求しました。

本学が初参加の時5歳だった「福市 大(ふくいちだい)」も小3になりました。弟妹の「福市 保(ふくいち たもつ)」と「育(いく)」は5歳となり、おじいちゃんから70年前広島と福山で実際にあった話を聞きます。紙芝居として作成されたそれぞれのストーリーを一連のものとして実写化してまとめるにあたり、見たり聞いたりして情報を受け取るだけでなく、考えながら能動的に「動く」、「歌う」という要素を織り込みました。

♪平和の花が咲きました♪

本学の発表には分散する各会場から続々と見学者が集まり、1000人を超える保育学生と先生方を前に、研究発表の最後を締めくくりました。原作は静止画だった場面を臨場感あふれる演技で再現し、原爆の衝撃は音や爆風を伴って迫ってきました。苦しい時代を乗り越え、世界中に平和の種をまき芽から花、木へと育てていく場面では、会場全体が一体となってたくさんの平和の花や木が育ち、圧巻といえる光景でした。広島原爆の2日後、福山空襲時サイレンが鳴り響き火の中を逃げ惑う中、福山城の焼け落ちる瞬間は苦心して制作・表現しただけあって人々の目に焼き付いたことと思います。全員の思いを込めた「母と子の八月八日」の合唱は、その場にいた全ての人を素晴らしいハーモニーで包み込み、会場の誰もが「平和」の重要性をかみしめました。

講評では、「平和という難しいテーマに挑み、歌・身体表現・造形・手遊びと多様な表現方法を駆使し、総合的にかつ見事に表現した素晴らしい発表だった。」「子どもたちがおかれた現代の情勢をきちんと踏まえ、平和は日本だけで作り出せるものではなく、世界的視野で考えていく必要があることを再確認させてくれた。」「この研究発表に至るまでの教材研究の深さと教材解釈に対する真摯な姿勢が、ひしひしと伝わってくる発表でその努力に敬意を表したい。」と、研究内容の質の高さをほめていただきました。これまで本学も含めどこの大学も、子どもたちの笑顔を志向する発表がほとんどでしたが、今回はその子どもたちの笑顔を守り続けていくために忘れてはならないことを、深く掘り下げて考えていきました。戦後70年の節目に広島の地で研究発表する意味を全員で考え表現したことが、見ている人々に伝わり嬉しく思います。

他養成校はこの保育学生研究大会にゼミで年間通じて取り組んだり、クラブ活動で毎日練習して臨んだりしますが、本学は実質的に3学期の授業(週1回)を中心に履修者全員が力を合わせて取り組みます。学内的にきわめて忙しい10月11月、学生たちは密度の濃い話し合いと練習を重ね、一致団結して意識と質の高い研究発表を成し遂げました。本学の学生たちは全員、それぞれの表現で最高の輝きを放ち、会場中が有意義な時間・空間を共有できました。

見学参加した保育コース3年生4名も2年生がベストコンディションで臨めるよう、荷物・記録等様々な場面において臨機応変に動いてくれました。昨年研究発表を経験した立場から、そのアドバイスは的確で発表直前まで指導的役割を立派に果たしていました。発表者だけでなく、参加した学生全員の大きな成長を感じることができ、この研究大会への参加が学生にとって大きな教育効果をもたらしているといえます。若い大学ではありますが、他大学に誇れる伝統が形成されていると思います。

今回の研究発表に際しては、人権平和資料館・消防局他関係諸機関、教職員の方々、先輩・後輩の支援のおかげで学生たちは持っている力を存分に発揮することができました。学生たちは「広島の大学に来たからこそ学ぶことのできた貴重な経験だと思う」「これで終わりではなく、平和を伝えていく責任を保育者として努めたい・努めるという思いを持った」「見通しを持って仕事をすること、意見を言い合いながら協力して一つのことを成し遂げていくことを通して仲間とのきずなが深まった」「私の保育人生の中で絶対に忘れられない大切な体験となった」「私たち福山市立大学の発表は演じる側と観る側が分けられることなく感情を共有し、全員参加できる発表になったのではないか」「満員の客席が一緒に手遊びをしてくれているのを見て、嬉しくて気持ちがよくて自分たちも笑顔で発表できた」「応援してくれた全ての人に感謝している」など感想を述べていました。

仲間と力を合わせて研究発表をやり遂げた今、学生たちは感謝の気持ち・達成感・充実感とともに更なるステップアップを目指しています。この貴重な経験を糧にさらに保育者・教育者としての力量を伸ばしてほしいと願っています。

当日の様子

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1945年8月6日午前8時15分    原爆投下直後のものすごい爆風
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「水、み・ず・・・」   「あ、アオギリさんから芽が出とる!」「よし、わしらも頑張るか」 
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2004年、猛烈な台風で倒れたアオギリ母さんを必死で起こす市民     こどもアオギリも世界中へ平和の種をまきます
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ぐんぐん育って              平和の芽が出てきたよ
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平和の花が咲きました         平和の木になりました
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1945年8月8日福山空襲         福山の街は燃え、福山城は炎に包まれた
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田んぼの中から見つかった母子3人はしっかりと抱き合っていた  ぼくたちはわすれない、福山が燃えた日を
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会場全体に響き渡る素晴らしいハーモニー(歌「母と子の八月八日」)      はじける笑顔、みんなよく頑張りました!

問い合わせ先

福山市立大学事務局学務課
 住所:〒721-0964 広島県福山市港町二丁目19番1号
 電話番号: (084)999-1113(直通)
 FAX番号: (084)928-1248
 電子メール : gakumu@fcu.ac.jp

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