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【大久保先生の学生探訪】第4回:向垣内胡桃さん

2022年10月 5日

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卒業研究は終わりではなく始まり

愛着スタイルと社交不安の関係を解き明かす心理ゼミの学生

大久保先生が本学の学生が行っている魅力的な活動を紹介する「大久保先生の学生探訪」。第4回目のお客様は教育学部4年の向垣内胡桃さんです。

「忙しいほうが好き」という向垣内さんは,課外での実地体験活動や放課後チャレンジ教室での学習支援を精力的に行いながら,掛け持ちのアルバイトをこなす学生生活を送っています。高校時代にピアジェ※を探究したことをきっかけに心理学に興味を持ち,大学2年次からは一貫して心理ゼミに所属し発達に係る科学的探究を進めています。今回は,そんな向垣内さんから,現在,佳境に入っている卒業研究についてお話を聞きました。
※ピアジェ:ジャン・ピアジェ。スイスの心理学者。

向垣内さんの研究のテーマは「大学生の親しい人との愛着スタイルが社交不安に与える影響」です。専門用語として次のことをあらかじめ調べてみました。

「愛着」とは特定の人との間に形成される情緒的なつながりや絆のこと。

「愛着スタイル」とはどのような繋がり方を求めているかという関わり方の傾向のこと。「社交不安」とは人前での発言や発表で緊張や不安を感じる状態のこと。

大久保 : 向垣内さんが研究で導きたいことはどのようなことですか?

向垣内 : 私の研究では,「親密性の回避(深いつながりや愛を避ける傾向)」と「見捨てられ不安(友達や恋人が去ってしまうことを恐れる傾向)」の2つの因子で愛着スタイルを4つに分類しています。そして,その愛着スタイルが他者からの評価などで生じる社交不安にどのように影響しているかを分析しようとするものです。

専門用語が頭の中をグルグル回って"質問できない状態"のインタビュアーを見て,向垣内さんは次のように追加して話してくれました。

向垣内 : 私の研究の目的は,愛着の対象者(母親,父親,友人,恋人など)のうち,だれかと安定した愛着を形成していけば社交不安は低くなるのではないか,を導いてみたいということです。

大久保 : 何となくわかってきました。でも,そもそもこの研究に着目したきっかけは何ですか?

向垣内 : 小学校で実習をしたとき,授業中に発表できずに泣いてしまう子どもがいて,その背景を知りたいと思いました。実は私も小学生のときに同じような体験をしていて,人前では不安を抱いていたのを覚えています。私の場合,ある先生と出会いから,ものごとをポジティブに捉えることができるようになり不安はなくなっていきました。今から思えば,その先生と安定した愛着スタイルを築けたことがおおきかったのかなと思います。今でも先生には何かあれば連絡を入れています。このようなことが研究のきっかけですかね。

大久保 : 小学生にとって,学校の先生が愛着の対象者になりうるということですか。愛着と言えば,乳幼児期の子どもを抱きかかえる母親のイメージがあるのですが・・。

向垣内 : 心の安全基地や心の支えとしての愛着対象は,乳幼児期から青年期にかけて,親から友人へ,そして恋人へと移行すると考えられています。今回の研究では大学生を対象に調査を行っていますが,ほんとうは小学生を対象にできればよかったです。

大久保 : これからは毎日,目の前に小学生がいる(教師としての)生活ですから,それこそ職務の一つとしてこの研究を続けてほしいですね。期待しています。

向垣内 : 私も子どもたちと良い関係を築きたいので,これからも追究していきたいテーマです。そして,子ども理解を深めるうえで心理学を学んだことはよかったと思っています。

現在,58項目に及ぶ質問について,教育学部の多くの学生からの回答を得て,向垣内さんの分析と考察がはじまっています。この度の研究で彼女が手にするものは卒論の完成ではなく,「子どもとの良い関係づくり」に向かう研究意欲だと感じました。「これからが実践的研究のはじまりですね。研究がある程度まとまったら,ぜひ福山市立大学で報告してください」とお願いし,インタビューを終了しました。

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