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【大久保先生の学生探訪】番外編:田中先生の研究室を訪問!

2023年7月13日

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 本学の学生が行っている魅力的な活動を大久保先生が紹介する「大久保先生の学生探訪」。今回も番外編として,教育学部の田中直美先生の研究室を訪問しました。

大久保:
 田中先生のご専門は「ドイツ・ユダヤの対話思想」ということですが,このことと教育との関わりを知りたくて取材に来ました。まず,対話思想とはどのようなものですか?

田中先生:
 ご存じのように第二次世界大戦でユダヤ人はナチスからひどい迫害を受けたわけですが,ユダヤ人「排除」の企ての背後にある思想的・歴史的状況を追いながら,いかに他者と共に生きることができるかを研究しています。具体的には,「複数性の担保(多様性の尊重)」を追究したアーレント※¹や,ユダヤ人とドイツ人が,ひいては人類がどのように共にあることができるかを模索したローゼンツヴァイク※²の思想を歴史的に解明していくことを試みています。2人の思想を簡単に言うと,違う人たちが共にあるために「対話」が重要になるということです。「対話」においては,どんなに言葉を尽くしても, "わからなさ"が残ります。そして,相手のことがわからないからといってあきらめてしまうのではなく,たがいに問いかけ続けることで相手を理解しようとします。このような対話を続ける姿勢が大切と言っているわけです。

※¹ハンナ・アーレントとも。ドイツ出身の政治哲学者,思想家。ナチズムの台頭によりアメリカに亡命。
※²ドイツ出身のユダヤ人哲学者。

織田:
 対話は我々が日常で行っている会話とは違うんですか?

田中先生:
 ほとんどの日常会話は,「今日はいい天気だね」「昨日何食べた?」など,情報の伝達や事実確認だったり,「答え」を出すことが求められますが,むしろ対話では問いが重要で,その問いを考え深めていくことが大切です。 私は思想的に対話を研究している一方で,学生と一緒に哲学対話を行っています。この哲学対話も「他者と共にあるあり方」を対話において考えさせられるので面白いです。哲学対話は一定のルールのもとで考え,問いを深めていく営みです。ルールは「人の言うことに否定的な態度をとらない」「ムリに発言しなくてもいい」・・などがありますが,対等な立場で話をするために「経験に基づいて話をする」というルールもあります。経験に優劣はないですからね。

織田:
 先生は道徳教育をご担当されていますが,哲学対話を道徳教育の中で行っていこうとされているということでしょうか。

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田中先生:
 道徳教育を深めていく一つの手がかりだと思っています。例えば,「嘘をついてはいけない」と教えることが道徳教育でしょうか?それで正直に生きることの価値を感じることができるでしょうか。哲学対話では,「嘘をついてもいい時がある」「ついていい嘘ってどんな噓」,私だったら・・と自分に引き寄せて考えることで価値についての理解が広がるように思います。子どもたちが"どう生きたいか"を考えることが道徳の時間でも必要です。そして先生は子どもたちの考えを聞き,先生もそれを一緒に考えることが大切だと思います。

大久保:
 そうです,そうです。子どもの考えを聞かないと。つい大人は結論を先に言ってしまうからね。

織田:
 実は・・,昨日もうちの子どもに「そんなことをしても無駄・・」と言ってしまって後悔しているんです。


 経験を話し始めた織田さんは,すでに哲学対話モードです。


田中先生:
 フフッ,大人はすぐに答えを求めがちですからね。そして,大人と子どもが対等に話すことって難しいですよね。でも,先生と子どもの間に対等な関係性を築くことは大切な視点で,これから教師になろうとしている学生には考えておいてほしいことです。

織田:
 田中先生の研究は,これからどこに向かっていくのでしょうか?

田中先生:
 対話は"あたりまえを切り崩す力"を持っています。ものの見方を広げ,考えを深める可能性があります。私は対話を理論と実践の両方から研究し,対話の持つ力を整理していきたいと考えています。

大久保:
 田中先生の対話の術にはまったようで,我々も考えを深めることができました。ありがとうございました。


  研究室を後にして・・


大久保:
 哲学すると腹が減ってきたな~。ラーメンでも食いに行くか。

織田:
 いいっすね。"とんこつ"行きましょう!

大久保:
 なにっ!スープは醤油系に決まっとる。郷に入れば福山ラーメンじゃろ~!

織田:
 絶対いやっ! "とんこつ"しか認めんとよ!

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