福山市立大学
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地域連携・国際交流・研究

Regional Cooperation / International Exchange / Research

研究

「重点研究」取組内容の紹介

重点研究について

「重点研究」とは,本学の特色ある研究を重点的かつ組織的に推進するために位置付けられた研究です。ここでは,本学の専任教員が取り組んだ様々な重点研究について紹介します。

2023年度

1「大学生のための対話実践-アカデミックなハビトゥスの養成-

代表研究者:田中直美

内容:
 私は、自分とは異なる背景や考え方をもつ他者とどのように共に在ることができるかを、ドイツ・ユダヤ思想における「対話」概念を手がかりに、理論的・思想史的に研究しています。文献研究をおこなう一方で、「他者と共に在るあり方」について哲学対話という実践の側からも考えています。哲学対話は一定のルールのもとで考え、ひとつの問いについて考えを深めていく実践です。
 日常会話の多くは事実確認や情報伝達など、何らかの答えを出すことが求められます。それに対して「対話」においては問いが重要で、一つの事柄を多角的にじっくりと考えることが求められるため、結論を急ぐよりも分からなさや新たな問いに出会うことが重要になります。こうした「対話」を理論的・実践的に研究し、その功罪を踏まえ、他者とどのように関わっていくのかを考えています。

研究要旨[PDF:484KB]

研究内容[PDF:3,636KB]

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2「日本における外国人集住団地と外国人コミュニティの展開

代表研究者:上別府隆男

内容:
 日本の公営住宅の中には、外国人の集住が進み、外国人数が日本人数を上回るケースもあり、特色ある外国人コミュニティが現在出現しつつある。このようないわゆる外国人集住団地では、文化・価値観・生活習慣の違い、言葉の壁などに起因する騒音やごみなどのトラブルが起きがちである。本研究では、埼玉県川口市の中国人の多い芝園団地と愛知県豊田市にある日系ブラジル人が多数を占める保見団地においてヒアリングなどの情報収集を行った。前者では、外国人数が日本人数を超えた2015年以前は、ヘイトスピーチ、ごみと騒音問題が多かったが、自治会の活躍、相互の学習効果、日本人の高齢化などの理由で、現在は落ち着いている。一方、後者では、派遣社員の日系ブラジル人が増加する一方、日本人が高齢化などで減少しているため、コミュニケーションの壁も手伝って、自治会の運営や日本のルールの適用が難しくなっている。

研究要旨[PDF:157KB]

研究内容[PDF:474KB]

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3「子育て世代包括支援センターとの連携による大学発アートを取り入れた予防的教育-個人や社会にもたらす変化とその評価-

代表研究者:正保正惠
共同研究者:渋谷清、古山典子、上山瑠津子、山内加奈子、田中直美、渡邉真帆、弘田陽介(大阪公立大学教授)

内容:
 市内子育て世代包括支援センターと連携しながら妊娠期・子育て期の親に対してアート(音楽・美術・製作・メンタルヘルス・ボディワークなどのアート)を通した学びを各メンバーがプログラム化して実践し,間接的なアートと直接的な言葉による講座を重ねることで,個人や社会にもたらす実践方法を探った。
 大学と地域の行政が連携した異分野グループよるパイロット的WSThe AHRC Cultural Value Project の研究成果に基づく「個人の内省」,「アイデンティティ」,「主観的幸福感」などの効果を見出した。昨年度より地域の妊娠中の女性及び家族支援を行っていく実践を重ね,大学側の変革をも生み出しながら幸福をともに追求していくため,アートを取り入れた予防的学びを提供していくことに大きな意味が見出された。

研究要旨[PDF:624KB]

研究内容[PDF:2,344KB]

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4「福山駅前広場を対象とした都市熱環境改善モデルの提案と評価

代表研究者:横山真
共同研究者:渡邉一成

内容:
 近年、各地の都市では地球温暖化と都市ヒートアイランド現象による「都市高温化」が発生し、夏季を中心に人々の快適性や健康に影響を与えている。そのため、今後は都市高温化対策を積極的に導入し、夏の暑さに適応した都市づくりが必要と考えられる。
 そこで本研究では、再編が計画されている福山駅前広場を対象とし、数値シミュレーションを用いて現状の都市熱環境の特徴を把握した上で、「広場整備モデル」を作成し、芝生・樹木・水盤等を導入した際の都市熱環境の変化を明らかにした。さらにそれらの結果をベースに広場をゾーニングし、広場に期待されるアクティビティと組み合わせて、各ゾーンで熱環境に配慮しながらどのように広場を整備すると良いかを示した「都市熱環境から見た広場整備のアドバイスマップ」を試作した。

研究要旨[PDF:179KB]

研究内容[PDF:4,038KB]

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5「芦田川かわまち広場における快適性向上施設に関する研究-社会実験を通した効果検証-

代表研究者:根本修平
共同研究者:横山真

内容:
 芦田川かわまち広場の快適性や利便性を向上させる施設として、テーブルとベンチを一体にした日陰のある木製と鉄骨製の実験用区画を制作して、夏季に実験を実施したところ、酷暑期の利用が増加し、滞在時間の延伸や安心や安全も向上していることを把握した。また熱環境を実測した結果、日陰部分では表面温度が低下し、かつ日向と比べて気温や暑さ指数(WBGT)も低下している様子がみられた。これらのことから日陰や休憩に適した施設を設置することで広場の魅力が向上したことを確認した。

研究要旨[PDF:638KB]

研究内容[PDF:5,941KB]

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6「生活言語から学習言語への移行過程とその躓き-福山市「ことばの相談室」の事例と定型発達児の比較を通して-

代表研究者:伊澤幸洋

内容:
 具体的な日常生活場面で自らの意思を他者に伝達する目的で使用される言語を生活言語、高度で抽象的な思考を伴って学習活動に用いられる言語を学習言語と称します。生活言語は、生活経験の積み重ねによって次第に習得していくことができますが、学習言語の習得に困難を示す事例は少なくありません。これまでの研究報告としては、外国にルーツを持つ児童や発達障害、聴覚障害がある児童の事例が挙げられます。
 今回は、幼児の言葉の概念形成に着目して、幼児期後期に言葉の意味をどのように理解し応答できるのか、年長児の定型発達児を対象に調査し、併せて言語発達を主訴として「ことばの相談室」を利用している児童との比較研究を行いました。

研究要旨[PDF:380KB]

研究内容[PDF:236KB]

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7「江戸時代に発生した福山市北部の大規模土砂災害の実態調査

代表研究者:向井厚志
共同研究者:石尾広武、澤田結基、向井厚志、加藤誠章、清水聡行、横山真

内容:
 福山市神辺町の堂々川流域では1673年に土石流が発生し、その土砂が国分寺周辺地域に堆積したことが知られています。本研究では、同地域で常時微動測定による地盤調査を実施し、土石流堆積物の厚さ分布を調べました。同地域の地盤では、515Hz2540Hzの振動数帯に常時微弱な振動が現れていますが、これらは地表付近の軟弱な堆積層で励起されたものです。前者の振動が長期間かけて形成された堂々川による扇状地地形に対応しているのに対して、後者の振動は地表に薄く広がった土石流堆積物を反映していると考えられます。その層厚は最大1m程度であり、堂々川下流側の南南東方向ほど層厚が薄くなる傾向が確認できました。

研究要旨[PDF:272KB]

研究内容[PDF:4,566KB]

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8「実習における保育学生の感情管理方略に関する研究

代表研究者:上山瑠津子
共同研究者:池田明子、松尾浩一郎

内容:
 本研究は,保育学生が実習を通して子どもや保育者に対して,喜びや嬉しさなどのポジティブ感情,怒りや不安などのネガティブ感情をどのように管理(表出や抑制)するのかについて明らかにすることを目的とする。保育所実習および幼稚園教育実習に参加した保育学生の自由記述を分析した結果,「子ども」に対する感情管理では,子どもに伝えたい感情が伝わることを意識して,表情や声のトーンを変える,手やハイタッチなど身体的な動きを加えるなどの非言語的なアプローチを行っていた。一方,「保育者」に対する感情管理では,子どもの具体的なエピソードを伝える,言葉や表情を意識して感情を伝える,不安なことは相談,質問するなどを意識的に行っていた。以上から,保育学生は実習で出会う対象に応じて多様な感情管理を行っていることが明らかとなった。今後は,対象児の発達(乳児・幼児)に応じた感情管理方略についても検討していく必要がある。

研究要旨[PDF:331KB]

研究内容[PDF:2,276KB]

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2022年度

1「地域における多文化社会構築への基礎的研究:福山市を中心に」

代表研究者:上別府隆男
共同研究者:牧田幸文,劉郷英

内容:
 福山市の外国人人口はコロナ禍で一時的に減ったものの,技能実習生や留学生の増加に伴って長期的には拡大傾向にある。市の少子高齢化,人口減はこれから進行することが予測されるが,人材不足に陥っている多くの事業所にとって外国人は持続的な経営や運営に不可欠となっており,SDGsの視点からも市としての持続性を考える上で避けて通れない点である。
 これまで,行政,日本語教室,NPO,大学などが各分野で外国人支援を行ってきているものの,外国人のニーズ把握が難しくまた不足しているため,支援が十分行き渡っているとは言い難い。また,外国人への支援は子ども,労働者,高齢者などと分断されている場合が多いが,一世帯には多世代で構成されていることが多いことから,世代をつなぐ総合的な支援が必要とされている。
 以上の背景から,本研究は,子ども,労働者,高齢者をそれぞれ専門とする研究者が協働し,各グループのニーズ,そして,各グループへの支援の実態と課題を把握することを目的とする。

研究要旨[PDF:114KB]

研究内容[PDF:523KB]

地域における多文化社会構築への基礎的研究:福山市を中心に発表スライド表紙画像
発表中
発表中
発表中

2「子育て世代包括支援センター(日本版ネウボラ)との連携によるアートを取り入れた予防的教育」

代表研究者:正保正惠
共同研究者:渋谷清,山内加奈子,渡邉真帆,弘田陽介(大阪公立大学教授),住吉悦子(福山市ネウボラ推進課職員),佐藤晴恵(福山市ネウボラ推進課職員),河村桂子(福山市ネウボラ推進課職員)

内容:
 福山市ネウボラ推進課と連携しながら妊娠期の妊婦(とその夫)に対してアート(造形・製作・メンタルヘルス・ボディワークなどのワークショップ)を通した予防的な学びを行うことで,少しでも妊娠期やその後の子育て期を安心・安全に過ごすためのプログラムを開発した。また, 2021年度に作成したホームページを活用しながらも,対面での支援をつなげる研究を継続することで,福山のネウボラシステムを側面からサポートしつつ,オンラインや対面での支援の在り方を研究した。さらに,本学の地域連携事業として,アートを通したプログラムをさらに深め,妊婦(と夫)を対象にパイロット的に計画・実施し,学会での発表を行った。

研究要旨[PDF:130KB]

研究内容[PDF:462KB]

子育て世代包括支援センター(日本版ネウボラ)との連携によるアートを取り入れた予防的教育発表スライド表紙画像
背守り刺繍のワークショップ
発表中

3「延長保育における保育方法に関する研究-保育者による子どもへのかかわりに着目して-」

代表研究者:渡邉真帆

内容:
 延長保育とは,保育所等で開所時間を越えた後に行われる保育のことを意味します。近年は就労形態の多様化などの背景を受け,延長保育に関する制度が整備されてきています。ただ,子どもや保育者(保育施設で働く先生の総称)にとっては,閉所後の特別なことではなく,1日の保育の延長線上に位置づくものです。
 本研究では延長保育を含む子どもたちが帰っていく時間帯に焦点を当て,保育者が子どもとどのようにかかわるのか,工夫や配慮を明らかにすることを試みました。研究の一部として,保育士の方にインタビューを行い,質的に分析を行いました。
 結果として,まず,子どもの安全について複数要素から総合的に判断し,どのように延長の時間を過ごすかを考えていました。また,日中とは異なり緊張感から緩和された雰囲気の中で子どもとゆったりとかかわると考えていました。このように,この時間帯ならではの工夫や配慮があると明らかになりました。

研究要旨[PDF:115KB]

研究内容[PDF:967KB]

延長保育における保育方法に関する研究-保育者による子どもへのかかわりに着目して-発表スライド表紙画像
発表中

4「教師と子どもの信頼関係に関する研究-哲学対話におけるファシリテーターのあり方に着目して-」

代表研究者:田中直美

内容:
 私は,自分とは異なる背景や考え方をもつ他者とどのように共に在ることができるかを,ドイツ・ユダヤ思想における「対話」概念を手がかりに,理論的・思想史的に研究しています。文献研究をおこなう一方で,「他者と共に在るあり方」について哲学対話という実践の側からも考えています。哲学対話は一定のルールのもとで考え,ひとつの問いについて考えを深めていく営みです。
 日常会話の多くは事実確認や情報伝達など,何らかの答えを出すことが求められます。それに対して「対話」においては問いが重要で,一つの事柄を多角的にじっくりと考えることが求められるため,結論を急ぐよりも分からなさや新たな問いに出会うことが重要になります。こうした「対話」を理論的・実践的に研究し,その功罪を踏まえ,他者とどのように関わっていくのかを考えています。

研究要旨[PDF:91KB]

研究内容[PDF:414KB]

教師と子どもの信頼関係に関する研究-哲学対話におけるファシリテーターのあり方に着目して-発表スライド表紙画像
コミュニティボール

5「芦田川かわまち広場における魅力向上施設に関する研究」

代表研究者:根本修平
共同研究者:横山真

内容:
 「河川空間」は,都市生活において市民が気軽にアクセスできる数少ない自然空間で,都市生活や住環境の質を高める重要なオープンスペースである。福山市では「芦田川かわまち広場」において,かわまちづくりが進められている。
 本研究では,対象エリアの地域特性および環境特性を把握し「エリアの魅力向上につながる公共空間の活用方法や環境整備」のあり方に関する具体的な知見を得ることを目指した。
 夏季と冬季に実施した地域特性と環境特性の調査から,かわまち広場および隣接する総合体育館公園の特性を把握することができた。季節によって利用の傾向が異なることや目的的あるいは完結的な場所になっていることが,一方で更なる利活用の余地を示しているとも理解された。

研究要旨[PDF:143KB]

研究内容[PDF:1761KB]

芦田川かわまち広場における魅力向上施設に関する研究発表スライド表紙画像
動線調査結果(夏季)
発表中
発表中

6「アート活動による福山本通商店街のにぎわい創出に向けた実践的研究」

代表研究者:渋谷清
研究協力者:和田道雄(ギャラリーsankaku代表)

内容:
 福⼭本通商店街の⼀⾓に新たにオープンしたsankakuギャラリーの研究協⼒を得ながら,同ギャラリーにおける開廊以降の活動状況の把握や実践活動を試⾏する中で,福⼭本通り商店街のにぎわい創出につながるようなアート活動の具体的⽅策について検討することを研究⽬的とした。
 アート活動を実践する側と,その活動を受け⼊れてギャラリー運営をする側の双⽅向から検討した結果,商店街の中に位置するギャラリーをアート活動拠点として次の5点の具体的⽅策が⾒出された。

    1. ①美術館のみならずギャラリーに対する理解を進める
    2. ②近隣の⼦どもたちが気軽に⽴ち⼊れるような仕掛け
    3. ③展⽰関連企画の様々なワークショップの実施
    4. ④ギャラリースペースでの幅広いイベント企画開催
    5. ⑤"地域にあるギャラリー"を意識した企画展⽰

研究要旨[PDF:183KB]

研究内容[PDF:740KB]

アート活動による福山本通商店街のにぎわい創出に向けた実践的研究発表スライド表紙画像
sankaku Gallery
発表中

7「水質調査に基づくため池の被災時における水資源利用可能性の検証」

代表研究者:清水聡行
共同研究者:石尾広武,澤田結基,向井厚志,加藤誠章,横山真

内容:
 福山市東部には大小様々なため池が点在しており,中でも春日池は大きな貯水池である。春日池の用途は農業用水であるが,災害発生時には近隣住民の生活用水としての利用も考えられる。しかし,具体的な利用可能性評価には定期的な水質調査が必要である。
 本研究では,春日池の定期的な水質調査を通して季節的な水質変化等を把握することを目的とした。2022年10月より月1回の頻度で春日池水を採取し,BODやTOC等の水質を測定した。
 災害時等の緊急時における水利用については,ろ過を行うことで大腸菌等の細菌を除去することが出来たため,膜ろ過処理した後で消毒を行うことで雑用水への適用は可能であると考えられた。ただし,ろ過後もTOCや色度等がやや高い傾向にあったことから,飲用利用するためには,凝集・沈殿やオゾン処理などのさらなる処理が必要であると考えられた。

研究要旨[PDF:153KB]

研究内容[PDF:740KB]

水質調査に基づくため池の被災時における水資源利用可能性の検証発表スライド表紙画像
発表中

8「戦後福山市重度・重複障害児教育史研究-資料の収集・分析と関係者への聞き取り調査-」

代表研究者:吉井涼
共同研究者:今中博章,高橋実,我妻享

内容:
 本研究は、1960年代から1980年代における福山市における重度・重複障害児教育の成立と展開を、福祉・医療施設との関係性に着目しながら検討することを目的とする。
 同市の学校と施設に関する資料の発掘と整理、当時の福山養護学校(肢体不自由)と福山若草園を知る関係者へ聞き取り調査を行った。特に、(1)福山養護学校の在籍児の障害の重度・重複化の実態と変化、(2)福山養護学校の教師の問題意識と教育実践、教育課程の整備過程について分析を行った。
 研究対象の時期、全国の肢体不自由養護学校の在籍児の多くが脳性まひ児となっていたが、福山養護学校でも同様に在籍児の多くが脳性まひ児であった。1971年に新設された「養護・訓練」に関しては、「真に全教職員の課題になっていない」ことが指摘されていた。障害の重度・重複化を分析する際には、教師自身が子どもにどのような「まなざし」を向けていたかについて丁寧に見ていくことが必要である。

研究要旨[PDF:104KB]

研究内容[PDF:311KB]

戦後福山市重度・重複障害児教育史研究-資料の収集・分析と関係者への聞き取り調査-発表スライド表紙画像
発表中
発表中

研究

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