Regional Collaboration / International Exchange / Research
研究
「重点研究」とは,本学の特色ある研究を重点的かつ組織的に推進するために位置付けられた研究です。ここでは,本学の専任教員が取り組んだ様々な重点研究について紹介します。
代表研究者:正保 正惠
共同研究者:渋谷 清、池田 明子、古山 典子、山内 加奈子、宮前 良平、大谷 悠
内容:
市内の子育て世代包括支援センター(日本版ネウボラ)と連携しながら大学独自の拠点を作ることをめざして、アートを通した安心・安全を感じる学びをプログラム化し、個人や社会にもたらす変化を評価していく足がかりを作り、新しいタイプの大学発の子育て・親育て拠点の在り方を問うた。
今回の実践の下敷きにしたのは、Geoffrey Crossick、 Patrycja Kaszynska (2022)である。自転車発電で電気をつくろう(大谷)、音楽づくりを気軽に楽しもう(古山)、絵本の世界を愉しもう(池田)、背守刺繍で想いを伝えよう(正保)、何気ない日常を想起しよう(宮前)、絵でコミュニケーションしよう(山内)、みんなで楽しむ造形遊び(渋谷)というタイトルで開かれた世界観が広がり、それらの感想からは、「個人の内省」、「アイデンティティ」、「主観的幸福感」などの項目についてプラスの評価がなされ、さらに大学を拠点に自分たちが研究をしながら新たなワークショップを作っていきたいという創発がなされた。


代表研究者:上別府 隆男
内容:
現在、全大学数の12.5%、全在学大学生数の約6%を占める公立大学は、国立・私立大学に比べると小さな存在であるが、地域社会での知的・文化的拠点として中心的役割を担うことが期待されている。地域に根差す公立大学は、地方創生や地域活性化とともに、多国籍化・多様化する地域社会の多文化共生や国際交流を推進する役割も持つ。公立大学の中には国際交流・国際化に活発な大学もある一方、約4割の大学で国際交流の実態が確認できないという結果が報告されている(西村他、2023)。
また、国際化や国際交流に関する調査研究は、対象が国立大学と私立大学に偏っており、公立大学の傾向や実態については、その規模の小ささやその特質からかあまり関心を集めてこなかった。このような観点から、本研究は、公立大学の国際交流・国際化の現状とその背景を明らかにすることを目的とする。


代表研究者:林 聡太郎
共同研究者:横山 真
内容:
近年は地球温暖化や異常気象の影響に伴い、気候変動適応法において、市区町村長が地域における指定暑熱避難施設(クーリングシェルター;CS)を指定できる制度が設けられました。CSは、一時的に暑さを凌ぐ休憩場所として冷涼な環境に滞在することで深部体温の上昇を抑制し、熱中症による死亡を減少させることを目的としており、積極的な深部体温の低下を狙う方略は採られていません。本研究は福山駅を中心とする日常生活をシミュレートした暑熱環境下におけるまちなか歩行時の積極的な身体冷却を行うことによって、休憩時の体温上昇を抑制し熱中症予防に寄与する可能性が明らかになりました。今後は、まちなかで身体冷却を行う場所づくりを創造していくことを考えています。


代表研究者:山田 真世
内容:
子どもたちは、あそびという文化に参加する中で、素材や他者と触れ合う経験をしています。特に、保育の場で行われる感触あそびは、水や砂、新聞紙、小麦粉、片栗粉など幅広い素材を用いて、子どもの視覚や聴覚、皮膚感覚、運動感覚に働きかけるあそびです。幼児期の感触あそびについては、あそびの中で子どもは素材の特徴を知ったり、自分の身体を理解したり、他者とイメージを共有していること(無藤、 2012; 箕輪、 2006等)が指摘されています。
本研究は、0~2歳の保育で行われる感触あそびに着目し、乳児期の感触あそびの実態を把握し、感触あそびの意味について考えるものです。そのため、0~2歳児クラスの保育で行われている保育実践を調査し、感触あそびにおける保育者のねらいや、年齢クラスによる素材の違いや共通性等を検討しました。


代表研究者:上山 瑠津子
共同研究者:劉 郷英、池田 明子、今中 博章、高澤 健司
内容:
本研究の目的は、日本と中国の国際比較を通して、近年の保育・教育分野において中核的概念とされる「主体性〈agency〉」を育む保育実践の様相を明らかにすることである。調査1では、2012年に中国教育部が公表している「3〜6歳児の学習と発達ガイドライン[3-6岁儿童学习与发展指南]」の中国語原文を対象にテキストマイニングによる分析を行ったところ、「主体性」や「主体」の語は抽出されなかったが、関連語(「主动」(自発的)及び「愿意」(自ら進んで〜する)」等が確認された。調査2では、本学協定校である南京曉庄学院の附属幼児園、小学校でのフィールド調査を行った。特に、中国では、子どもが主体的に遊ぶための保育環境として地域や文化の要素を恒常的に取り入れていた。また園生活では、食事、片付けなどの日常生活に必要なスキルを、遊びを通して経験することが重視されていた。以上から、中国においても子どもの主体性を育む保育実践が展開され、遊びと文化、遊びと生活の融合の中にその特徴が見いだされた。


代表研究者:横山 真
研究協力者:澤田結基、向井厚志、石尾広武、加藤誠章、清水聡行
内容:
福山市南部に位置する鞆の浦は、瀬戸内海に臨み歴史的な街並みを有する港町であり、対岸の美しい自然景観を有する仙酔島と合わせて、備後地域を代表とする観光地の一つでとなっている。鞆の浦のような海に突き出た地域は、海風や季節風といった風の影響を様々な面で受けやすく、微気候や自然景観の形成に大きく寄与していると考えられる。
そこで本研究では、気象観測やコンピュータ・シミュレーションを駆使して、鞆の浦に吹く「風」の特徴を把握し、まず鞆市街地における風と微気候と町割りの関係を考察した。また現地踏査により、仙酔島における風と海岸地形(海食洞、タフォニ)との関係を考察した。最後にこれらの結果を踏まえて、鞆市街地および仙酔島の整備や保全のあり方を検討した。


代表研究者:小島 見和
共同研究者:清原 昭子、玉井 由樹、塚本 僚平、根本 修平、牧田 幸文、宮前 良平
内容:
福山は、人口や都市規模の割に駅南側の歓楽的集積が大きいことが特徴です。都市経営学部の様々な専門分野の研究者が協力し、スナック街の調査分析を通じて、福山のまちの社会・経済・空間的な課題を考察しました。おもに、1962年以降の福山市中心市街地のゼンリン住宅地図(店舗名などが書かれている)の比較分析と、福山市のスナックやバーの現地調査、経営者と常連客の方へのインタビュー調査を行いました。
その結果、福山では長年営業されているスナックやバーが、男性の社交関係が転職・リタイア後まで長く継続する居場所となっていること、1970年代にスナック軒数が急増し明治町から昭和町にかけて歓楽的集積が生じ、1980~1990年代にそれらがビル化したこと、日本鋼管(現JFE)をはじめとする製造業など企業の接待・社交の場としてスナックを含む夜の飲食業の構造ができてきたが近年コロナ禍などの要因もあり衰退傾向にあること、などを明らかにしました。


代表研究者:田中直美
内容:
私は、自分とは異なる背景や考え方をもつ他者とどのように共に在ることができるかを、ドイツ・ユダヤ思想における「対話」概念を手がかりに、理論的・思想史的に研究しています。文献研究をおこなう一方で、「他者と共に在るあり方」について哲学対話という実践の側からも考えています。哲学対話は一定のルールのもとで考え、ひとつの問いについて考えを深めていく実践です。
日常会話の多くは事実確認や情報伝達など、何らかの答えを出すことが求められます。それに対して「対話」においては問いが重要で、一つの事柄を多角的にじっくりと考えることが求められるため、結論を急ぐよりも分からなさや新たな問いに出会うことが重要になります。こうした「対話」を理論的・実践的に研究し、その功罪を踏まえ、他者とどのように関わっていくのかを考えています。


代表研究者:上別府隆男
内容:
日本の公営住宅の中には、外国人の集住が進み、外国人数が日本人数を上回るケースもあり、特色ある外国人コミュニティが現在出現しつつある。このようないわゆる外国人集住団地では、文化・価値観・生活習慣の違い、言葉の壁などに起因する騒音やごみなどのトラブルが起きがちである。本研究では、埼玉県川口市の中国人の多い芝園団地と愛知県豊田市にある日系ブラジル人が多数を占める保見団地においてヒアリングなどの情報収集を行った。前者では、外国人数が日本人数を超えた2015年以前は、ヘイトスピーチ、ごみと騒音問題が多かったが、自治会の活躍、相互の学習効果、日本人の高齢化などの理由で、現在は落ち着いている。一方、後者では、派遣社員の日系ブラジル人が増加する一方、日本人が高齢化などで減少しているため、コミュニケーションの壁も手伝って、自治会の運営や日本のルールの適用が難しくなっている。


代表研究者:正保正惠
共同研究者:渋谷清、古山典子、上山瑠津子、山内加奈子、田中直美、渡邉真帆、弘田陽介(大阪公立大学教授)
内容:
市内子育て世代包括支援センターと連携しながら妊娠期・子育て期の親に対してアート(音楽・美術・製作・メンタルヘルス・ボディワークなどのアート)を通した学びを各メンバーがプログラム化して実践し,間接的なアートと直接的な言葉による講座を重ねることで,個人や社会にもたらす実践方法を探った。
大学と地域の行政が連携した異分野グループよるパイロット的WSがThe AHRC Cultural Value Project の研究成果に基づく「個人の内省」,「アイデンティティ」,「主観的幸福感」などの効果を見出した。昨年度より地域の妊娠中の女性及び家族支援を行っていく実践を重ね,大学側の変革をも生み出しながら幸福をともに追求していくため,アートを取り入れた予防的学びを提供していくことに大きな意味が見出された。


代表研究者:横山真
共同研究者:渡邉一成
内容:
近年、各地の都市では地球温暖化と都市ヒートアイランド現象による「都市高温化」が発生し、夏季を中心に人々の快適性や健康に影響を与えている。そのため、今後は都市高温化対策を積極的に導入し、夏の暑さに適応した都市づくりが必要と考えられる。
そこで本研究では、再編が計画されている福山駅前広場を対象とし、数値シミュレーションを用いて現状の都市熱環境の特徴を把握した上で、「広場整備モデル」を作成し、芝生・樹木・水盤等を導入した際の都市熱環境の変化を明らかにした。さらにそれらの結果をベースに広場をゾーニングし、広場に期待されるアクティビティと組み合わせて、各ゾーンで熱環境に配慮しながらどのように広場を整備すると良いかを示した「都市熱環境から見た広場整備のアドバイスマップ」を試作した。


代表研究者:根本修平
共同研究者:横山真
内容:
芦田川かわまち広場の快適性や利便性を向上させる施設として、テーブルとベンチを一体にした日陰のある木製と鉄骨製の実験用区画を制作して、夏季に実験を実施したところ、酷暑期の利用が増加し、滞在時間の延伸や安心や安全も向上していることを把握した。また熱環境を実測した結果、日陰部分では表面温度が低下し、かつ日向と比べて気温や暑さ指数(WBGT)も低下している様子がみられた。これらのことから日陰や休憩に適した施設を設置することで広場の魅力が向上したことを確認した。


代表研究者:伊澤幸洋
内容:
具体的な日常生活場面で自らの意思を他者に伝達する目的で使用される言語を生活言語、高度で抽象的な思考を伴って学習活動に用いられる言語を学習言語と称します。生活言語は、生活経験の積み重ねによって次第に習得していくことができますが、学習言語の習得に困難を示す事例は少なくありません。これまでの研究報告としては、外国にルーツを持つ児童や発達障害、聴覚障害がある児童の事例が挙げられます。
今回は、幼児の言葉の概念形成に着目して、幼児期後期に言葉の意味をどのように理解し応答できるのか、年長児の定型発達児を対象に調査し、併せて言語発達を主訴として「ことばの相談室」を利用している児童との比較研究を行いました。


代表研究者:向井厚志
共同研究者:石尾広武、澤田結基、向井厚志、加藤誠章、清水聡行、横山真
内容:
福山市神辺町の堂々川流域では1673年に土石流が発生し、その土砂が国分寺周辺地域に堆積したことが知られています。本研究では、同地域で常時微動測定による地盤調査を実施し、土石流堆積物の厚さ分布を調べました。同地域の地盤では、5~15Hzと25~40Hzの振動数帯に常時微弱な振動が現れていますが、これらは地表付近の軟弱な堆積層で励起されたものです。前者の振動が長期間かけて形成された堂々川による扇状地地形に対応しているのに対して、後者の振動は地表に薄く広がった土石流堆積物を反映していると考えられます。その層厚は最大1m程度であり、堂々川下流側の南南東方向ほど層厚が薄くなる傾向が確認できました。


代表研究者:上山瑠津子
共同研究者:池田明子、松尾浩一郎
内容:
本研究は,保育学生が実習を通して子どもや保育者に対して,喜びや嬉しさなどのポジティブ感情,怒りや不安などのネガティブ感情をどのように管理(表出や抑制)するのかについて明らかにすることを目的とする。保育所実習および幼稚園教育実習に参加した保育学生の自由記述を分析した結果,「子ども」に対する感情管理では,子どもに伝えたい感情が伝わることを意識して,表情や声のトーンを変える,手やハイタッチなど身体的な動きを加えるなどの非言語的なアプローチを行っていた。一方,「保育者」に対する感情管理では,子どもの具体的なエピソードを伝える,言葉や表情を意識して感情を伝える,不安なことは相談,質問するなどを意識的に行っていた。以上から,保育学生は実習で出会う対象に応じて多様な感情管理を行っていることが明らかとなった。今後は,対象児の発達(乳児・幼児)に応じた感情管理方略についても検討していく必要がある。

