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学長の式辞

2019年度 学位記授与の会式辞

(実施:2020年3月23日)

学位記授与の会式辞

学位記授与式は,大学生活の最後を飾る場です。私たち教職員は,在学生や保護者の方々,さらに来賓の方々とともに,心を込めて学生のみなさんの門出を祝福したいと,式典の準備をしてきました。

しかし,新型コロナウイルスによる感染症が全国・全世界に広がりつつあるなか,式典は中止せざるをえませんでした。みなさんには,残念な気持ちを抑え,新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためにご協力いただき,心より感謝申し上げます。

式辞に代えて,一言お祝いの言葉を述べさせていただきます。

みなさんは,年齢について考えたことがありますか? 6歳に達した子どもは次の4月1日を迎えると小学校に入学します。日本には定年制度があり,多くの企業では60歳を迎えると定年退職することになっています。日本の社会では,誕生してからの時間経過としての年齢が,社会的な基準として機能しています。

年齢はすべての人に一律に与えられているかのように見えますが,そうではありません。誕生してからの時間経過という年齢の外形は同じであっても,経験と発達という年齢の内実は個々の人で異なるし,また社会の変化によっても違ってくるからです。日本では6歳で小学校に入学しますが,6歳時点での経験や発達の仕方にはかなり個人差があります。それが一緒に集まって同じ内容を学習するわけですから,当人の努力は並大抵のものではありません。6歳児が一堂に会して勉強することは,教師の指導や家族の応援があってはじめて成り立ちます。同様に就職してから60歳の定年まで働くために,本人も回りの人も頑張り続けています。年齢に依拠した社会制度は大勢の人々の涙ぐましい努力の上に成り立っています。

ところで,みなさんは全国各地から福山市立大学に集い,立派に卒業を迎えることとなりました。実習やインターンシップを頑張った人,卒論や修論に真剣に取り組んだ人,スポーツや課外活動に燃えた人,アルバイトでお金をいっぱい稼いだ人,素敵な出会いがあった人,授業が楽しくて仕方なかった人・・・本当はみなさん一人ひとりから大学生活で経験したことについて話を伺いたい。また,みなさんが何に努力し,誰から助けられ,どのように成長したかについて,ここで教えていただきたいところです。

同じ年齢でも早く成長する人もいればゆっくり成長する人もいます。同様に早く老化する人もいればゆっくり老化する人もいます。しかし,人生は残酷です。なかなか思うようにはいきません。成長も老化もともに愛し,受け入れていくしかありません。

大学生は大人への入口,大人としての最初の年齢です。この年齢は大学を卒業すると同時に終わるようなものではありません。10年をかけて焦ることなく大人としての成長を遂げてください。これからみなさんの将来には,予想もしなかったことが待ち受けています。今回の新型コロナウイルスのような影響を被ることもあるでしょうし,社会人として楽しいこともたくさん待っていることでしょう。

福山市立大学でともに過ごした歳月を拠り所とし,これからの人生を堂々と歩んでください。そして,よき年齢を重ねてください。なぜなら,年齢は単なる時間やその断片ではなく,ある時期を通じての経験や発達の総体であり,未来への希望だからです。

みなさん,ご卒業おめでとうございます。

2020年(令和2年)3月23日
福山市立大学 学長 田丸 敏髙

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