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学長の式辞

2022年度 学位記授与式式辞

(実施:2023年3月23日)

学位記授与式式辞

 本日、ここに学位授与された、教育学部(101名)と都市経営学部(149名)計250名の卒業生の皆さん、教育学研究科(4名)と都市経営学研究科(2名)計6名の修了生の皆さん、おめでとうございます。

 そして、勉学に励む皆さんを支えてこられましたご家族をはじめ関係者の方々に、心よりお祝い申し上げます。

 また、本日はご多忙中にもかかわらず、福山市長 枝広直幹様にご臨席を賜り、心より御礼申し上げます。

 皆さんは、「発達の危機」という言葉を聞いたことがありますか?人間の発達過程は、胎児期・乳児期・幼児期・児童期・青年期・壮年期・中年期・老年期に区分して捉えることができます。ある時期から次の時期の以降は、平穏に見える場合もあれば、葛藤が顕在化する場合もあります。葛藤が顕在化するときを「発達の危機」と呼びますが、よく知られた危機としては、3歳の危機、思春期の危機、中年の危機、初老の危機があります。

 なぜ「発達の危機」が出現するのでしょうか? 人間は自然的存在なので、身体は年齢とともに否応なしに変わっていきます。歩くことに慣れてきた2歳半ころ、子どもは「イヤ」という言葉を多用するようになり、大人は言うことをきかない子どもに振り回されます。12歳~13歳ころ迎える思春期の危機は、身体の変化とくに性を受け入れられるかどうかに始まります。大人を批判したり自らの情けなさを嘆いたり、悩みは耐えません。

 「発達の危機」はまだ終わっていません。中年の危機は45歳頃ピークを迎えますが、学生の皆さんの親御さんたちがその最中におられるのではないかと思います。目がかすむ、足腰の痛みや肩こりが続く、疲れやすい等の身体的な変化が特徴的です。とは言え、仕事や家族においては責任ある立場にあり、がんばらなくてはいけないことが多いので、なかなか辛い時期です。かつて「初老」は40歳を指す言葉でしたが、現代では40代は現役真最中であり、初老を実感するのは60歳を過ぎたあたりではないかと思われます。初老の危機、退職を迎え、第2の人生をどのように歩むのか、これは私自身が当面する「発達の危機」でもあります。

 ところで、「発達の危機」は個人において生じる現象ですが、身体の変化によってのみ引き起こされるわけでもありませんし、地域社会の状況と無関係に起きるわけでもありません。収入や役職の変化、災害や戦争といった環境の変化からも否応なしに引き起こされることがあります。私たちは、この3年間、新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われ、それぞれの生き方が問われ、「発達の危機」を過ごしてきたといっても過言ではないでしょう。

 「発達の危機」は、人に困難をもたらすだけではありません。それは飛躍の準備期間でもあります。私は、かつて、幼児の立ち幅跳びについて研究したことがあります。両足を揃えて飛び出し前方に着地するという、あの運動です。3歳児にはこれが難しく、飛び上がっても前に行かず同じ所に着地してしまうし、ときには後ろに着地してしまうこともあります。なぜでしょう? 前に飛び出すためにいったんしゃがみ込むという、ためをつくる必要があり、それがなかなか難しいからです。これは人生の教訓のようではありませんか?

 人生において前に出ることにあせって結局は堂々巡りを繰り返すことがよくあります。しかし、飛び出すためにいったん身を引いて構えを作るのが必要なときもある。この3年間、私たちは新型コロナウイルスの感染拡大という危機を共有し、苦悩しながら、ためをつくってきました。

 本学で共に学んだ皆さん、この経験を生かしながら、新たな世界へ飛び立ってください。そのことを祈念して学長の式辞といたします。

2023年(令和5年)3月23日
福山市立大学 学長 田丸 敏髙

学長の式辞

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