福山市立大学
本文へ移動

総合案内

University General Information

学長の式辞

2021年度 学位記授与式式辞

(実施:2022年3月23日)

学位記授与式式辞

 本日、ここに学位授与された、教育学部(106名)と都市経営学部(144名)の計250名、大学院教育学研究科(4名)と都市経営学研究科(2名)の計6名の皆さん、おめでとうございます。
 また、会場に入ることのできなかったご家族をはじめ関係者の方々に、心よりお祝い申し上げます。
 本日はご多忙中にもかかわらず、福山市長 枝広直幹様にご臨席を賜り、心より御礼申し上げます。

 いまから4年前、私は入学式の式辞において、大学は学問の府であり、学問の「もん」は「問い」であるという話をしました。闇雲に解決方法に飛びつく前に、正確に問いを立てることが大切であり、またそれが大学の役割だからです。その時はまだ、世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大することを、それによって私たちの生活が一変することを知る由もありませんでした。

 2020年1月に日本で新型コロナウイルスが発見された時も、それは大型クルーズ船の中の出来事であったり、人が密集した屋形船内での事であったり、いずれにしても福山市立大学からは遠いところで起こっていることのように感じていました。しかし、全国から感染が報告されるに及んで、そのような個人的対応ではうまくいかないことに気付きました。

 本学に危機が接近してきたとき、いくつもの問いが必要であることを知りました。医学や衛生学、統計学や経済学、心理学や社会学、さらに国際関係論に至るまで多くの学問上の問いが立てられ、それらを総合して解決の道筋を探ることが必要になりました。

 難しい問題に立ち向かうためには、ひとつの問いに留まることなく様々な視点から問いを立てること、ひとつの解答に固執することなく多様な解答を総合して解決策を探ることが重要です。本学において皆さんは、地域に根ざした 二つの実践的な学問──児童教育学と都市経営学──を学んできました。いずれも多様な視点を持ち学際的な学問です。本学で学んだことは、これからの皆さんの職業や生活において、間違いなく役に立ちます。

 本学における学びを通じて、皆さんは ご自身の問いを深化させ発展させてきました。問いの深化・発展のためには専門的知識に加えて、3つの要素が必要であると考えられます。それは、「経験」と「仲間」と「言葉」です。

 第一に、問いは経験の中で生まれます。皆さんは、「キャンパスは街、学ぶのは未来」という本学の標語を覚えていますか。福山市立大学は、街をフィールドにした教育と研究を行っているので、まちづくりに関わる活動を通じて、皆さんには様々な問いが生まれてきたことでしょう。或いは、子どもたちと関わる中で、数多くのことを学び、新たな問いを発見してきたことでしょう。皆さんにとって、卒業研究や修士論文はその中のひとつの問いとの格闘でした。しかし、ひとつの問いの背後には、これからの人生で考え続けるべき多くの問いが蓄えられていることと思います。

 第二に、問いはそれを共有する仲間があって、はじめて維持し継続することができます。研究者は専門に応じて学会を作り、そこで問いを共有します。学会毎にいま人気のあるポピュラーな問いと、関わる人が少ない問いとがあります。しかし、どのような問いであっても、参加人数に関わらず真摯な議論が行われ、問いの間に優劣の差別はありません。また、問いに対する答えは、偉い人が決めるものでもなければ、多数決で決めるものでもありません。何が正しいか、何が真理かは、事実や論理に基づく検証を経て決まっていきます。同様に、皆さんは、講義やゼミを通じて学問に接し、学生同士の仲間に支えられて、問いを育んできたことと思います。

 第三に、問いは言葉によって意識され、人と分かち合うことができます。言葉は、世代から世代へ、地域から地域へ、人類の歴史と文化を伝える道具です。その道具を洗練させるためには専門的な研究が必要でした。皆さんは専門に応じて、そうした考える道具を習得してきたことでしょう。教育学を学んだ皆さんは、学習や遊びといった用語も、日常生活で使われる意味合いとは違った 独特の概念であることを知ったことでしょう。都市経営学を学んだ皆さんは、環境や地域、持続的発展について概念的に把握することができるようになったことでしょう。日常的な言葉から専門的な言葉への移行は、画期的な変化をもたらします。前者は生活に根ざし、後者は科学体系に根ざし、双方を繋ぐことで、皆さんの思考は飛躍しました。

 大学で学んだ知識は、専門外の人にも 分かりやすく伝えられる必要があります。私たちが生きている現代はある特定の専門内では解決できないような問題に溢れています。新型コロナウイルスと対峙するために、異分野の人々、他地域で暮らす人々と協力することが必要でした。福山市立大学を卒業する皆さんは、専門に閉じこもらず 多くの人と協力することが得意です。どうぞ自信を持って、社会に出て大いに活躍してください。

 皆さん、ご卒業、おめでとうございます。

2022年(令和4年)3月23日
福山市立大学 学長 田丸 敏髙

学長の式辞

このページのトップへ