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学長の式辞

2018年度 学位記授与式式辞

(実施:2019年3月23日)

学位記授与式式辞

 ここに学位授与された、教育学部(97名)と都市経営学部(148名)、教育学研究科(4名)と都市経営学研究科(1名)、計250名のみなさんのみなさん、おめでとうございます。
そして、勉学に励むみなさんを支えてこられましたご家族をはじめ関係者の方々に、心よりお祝い申しあげます。
また、本日はご多忙中にもかかわらず、福山市長 枝広直幹様、福山市議会議長 早川佳行様をはじめ、各界ご来賓の方々にご臨席を賜り、心より御礼申しあげます。

 さてきょうは、みなさんへのはなむけとして、「岐路に立つ」ということについて、お話ししたいと思います。みなさんは人生の過程で幾度か、岐路というべき分かれ道に立ち、どの道を歩むか選択してきました。大学の選択も就職の選択も、やはり岐路に立ったことになります。

人生においては、大学に行く人にも行かない人にも共通して岐路に立つときがあります。こうした岐路をもとにすると、人間の発達過程はいくつかの時期に区分できます。乳児期や幼児期、児童期や青年期、壮年期や中年期、老年期というのがそれにあたります。この時期区分の基礎には生物的な変化があるので、時期区分はほぼ年齢に応じたものとなっています。みなさんの中には、もっと幼児期や児童期を続けたかったという人もいるでしょうし、反対に早く青年期を抜け出して、一人前の大人になり自由を得たいという人もいるでしょう。しかし、思うようにはいきません。どの時期においても葛藤や悩みが生じますが、それが「岐路に立つ」あかしでもあります。みなさんは本学で、こうした発達過程の全体を学んできました。そのためご自身がさまざまな「岐路に立つ」ときも、本学で習得した知識や方法を活用して、人生の課題に立ち向かうことができます。

 また、「岐路に立つ」ことは個人的な出来事のように見えますが、そうではありません。私たちは地域社会のなかで生活しているので、個人の出来事は地域社会の有りようと結びついています。みなさんは本学で「地域の持続的発展」について学修してきました。日本のさまざまな地域で起きている人口減少と働き手不足の問題をどのように解決するかというのが、代表的な課題です。みなさんはこうした課題と向き合いながら、人生を全うすることができます。

 みなさんは、合計特殊出生率という用語をご存じだと思います。2016年の日本の合計特殊出生率は1.44です。人口を維持するためには、2.1ほどの出生率が必要だと言われているように、このままでは少子化が進行し急速に人口が減少します。みなさんは本学での学修を通じて、こうした課題に対し向き合い解決するための基本的な知識や技能を身につけてこられたことと思います。社会はそうした知識や技能を活かして活躍してくれるみなさんを待ち望んでいます。

 ところで、世界が直面するもう1つの問題を見逃さないでください。それは、世界的な規模で起きている人口増加の問題です。現在の世界人口は、約76億人です。国連による「世界人口予測2017年改定版」では、2030年までに86億人、2050年には98億人、そして2100年には112億人に達すると見込まれています。その理由の1つは、後発開発途上国における高い出生率にあります。このままいくと、地球が人間によって埋め尽くされて食糧不足に苛まれることになってしまいそうだと心配になりますか?

 みなさん、不思議ではありませんか? 一方で、日本のように人口減少と働き手不足に悩む国があり、他方で、地球的な規模で人口増加と食糧不足が進行しているとは。今年1月に翻訳出版された「ファクトフルネス」という本があります。ハンス・ロスリングらが執筆した本で、統計など「事実に基づく世界の見方」が主張されています。農業が始まった紀元前8000年の地球人口は、500万人だったと推測されています。農業社会ではゆっくり人口が増加し、紀元後1800年頃に人口は10億人に達しました。その後工業社会のなかで人口は急増し、1930年には20億人に倍増しました。そして、現在76億人で、2100年を迎える頃には人口は112億人になると予測されています。地球人口は1万年をかけてゆっくり増加してきたのに、近年300年で100億人以上増加するという計算です。

 しかし、これは今後このまま幾何級数的に人口増加するという意味ではありません。データの示すところでは、開発後進途上国でも医療や教育の進歩、産業構造の変化に伴って、子どもをたくさん生む必要は減少し始め、いずれは世界全体で100億人から120億人で安定すると推測されています。その意味では、世界的な規模で捉えるならば、現代は人口の急増期から安定期に至る過渡的な時代と言えます。ただし、地域ごとに捉えるならば、現代は激変を伴う危機の時代であり、人類が生存し続けるためにさまざまな創意工夫が求められる時代でもあります。

 これまで「岐路に立つ」という話をしてきました。みなさんは今後の人生においても幾度となく岐路に立ち選択を迫られることと思います。みなさんが社会人として自立する道のりは、けっこう時間がかかるものです。地域社会の発展も一足飛びに実現できるものではありません。さらに地球全体の人口の安定化となると、80年以上の年月が必要です。みなさんには厳しい状況にめげることなく、事実に基づく大局的な時代認識をもって、堂々と岐路に立ち続けていただきたいと思います。
もちろん、私たち古い世代もまだ歴史の舞台から退場するわけではありませんので、安心してください。私たちもみなさんとともに、岐路に立ち、歩んでいくつもりです。福山市立大学の経験は必ず役に立ちます。どうぞ自信と誇りを胸に巣立ってください。

 本日は、本当におめでとうございます。

2019年(平成31年)3月23日
福山市立大学 学長 田丸 敏髙

学長の式辞

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