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学長の式辞
(実施:2021年3月23日)
ここに学位授与された、教育学部(105名)と都市経営学部(167名)の計272名、大学院教育学研究科(4名)と都市経営学研究科(3名)の計7名のみなさん、おめでとうございます。
また、会場に入ることのできなかったご家族をはじめ関係者の方々に、心よりお祝い申しあげます。
本来ならば、市長や市議会議長、福山市立大学運営協議会の方々にもご臨席いただくところでしたが、今回は新型コロナウイルスの感染を極力抑えるため、学生教職員のみの学位記授与式とさせていただきました。
みなさんの卒業をお祝いするための言葉を探しているとき、ある歌が浮かんできました。
暗きより暗き道にぞ入りぬべき
はるかに照らせ山の端の月
平安時代の歌人・和泉式部の詠んだ歌です。この一年を振り返ったとき、私はこの歌に共感を覚えます。
新型コロナウイルスの感染拡大は、昨年4月緊急事態宣言の第一波に続いて、第二波、第三波とやってきました。今年の1月には本学の学生も感染という被害に遭いました。この1年間は、いつ新型コロナウイルスから自由になれるのか、いつになったらワクチンや治療薬が開発されるのか、待ちわびる日々でした。
学生のみなさんも教職員も不慣れなオンライン授業に挑戦し学業を継続してきました。卒業研究も修士論文の執筆も苦労・苦心の連続だったことと思います。暗いところから暗いところへ向かい、なかなか道の先が見えないなか手探りで前に進んでいくという意味で、まさに「暗きより暗き道にぞ入りぬべき」です。
また、本学は2021年(令和3年)3月をもって開学10年を経過します。この10年を振り返ってみれば、2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災に始まり、震災・豪雨・ウィルス感染と被災の連続でした。まさに「暗きより暗き道にぞ入りぬべき」と言えます。
平安時代も疫病や震災が続き、暗き道を感じざる得ないことは同様だったのでしょう。しかし、「入りぬべき」という言葉には、その暗き道を人生の当然として受け入れる、あきらめと同時に覚悟を感じ取ることができます。耐えることを常としていた当時の人々の強さが想像されます。
暗きより暗き道にぞ入りぬべき
はるかに照らせ山の端の月
山の端(はし)に見える月がどれほどの明るさか、かすかな月明かりかもしれません。それでも月を頼りに人生を歩んでいこうとする姿に、私は強い感銘を受けます。
さて、大学にとって月とは何でしょうか? それは、学問に裏付けられた真理(truth)です。ここに卒業を迎えるみなさんは、児童教育学あるいは都市経営学という学問に裏付けられた真理を追究してきました。大学で学ぶものにとって、真理は暗き道を月のように照らしてくれる存在です。
では、どうして月は明るく照らすことができるのでしょうか? それは、太陽があるからです。月は太陽によって明るさを保つことができます。
では、太陽は何であると考えられるでしょうか? それはきっとみなさんご自身のことです。みなさんが輝いてこそ、学問も意味をもつことができます。
太陽は自らを見ることができません。月の明かりを見て自らの輝きを知ることになります。その意味で、卒業するみなさんには、ときどき母校である福山市立大学を振り返っていただきたいと思います。そして苦難の時も自らの輝きに対して自信を持って人生を歩んでください。
みなさんの今後ますますのご活躍をお祈りします。
2021年(令和3年)3月23日
福山市立大学 学長 田丸 敏髙