福山市立大学
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学長の式辞

2017年度 入学式式辞

(実施:2017年4月4日)

入学式式辞

 福山市立大学に入学許可された,教育学部と都市経営学部,教育学研究科と都市経営学研究科,計282名のみなさん,ご入学おめでとうございます。
また,勉学に励むみなさんを支えてこられましたご家族はじめ関係者の方々に,心よりお祝い申し上げます。
本日はご多忙中にもかかわらず,福山市長 枝広直幹様,福山市議会議長 小川眞和様をはじめ,ご来賓の方々にご臨席を賜り,心より御礼を申し上げます。

 福山市立大学は,2011年に開学しました。本学は,地域社会の持続的発展を掲げ,47万福山市民の期待が込められた大学です。そして,いま6年が経過し,今年も全国各地から学生のみなさんをお迎えすることができました。

 ところで,大学とは何でしょうか? 歴史を遡ると,13世紀初頭イタリアのボローニャ,フランスのパリ,イングランドのオックスフォードに大学が誕生しました。以来綿々と大学は存続し,第2次世界大戦後つまり1945年以降,世界中に大学数が増加しました。日本ではどうでしょうか?2016年度の文部科学省統計資料によると,わが国の大学は777校にのぼります。このうち,私立が600校,国立が86校,そして公立が91校です。福山市立大学は81番目に誕生した公立大学です。近年公立大学が急速に増加し,数の上では国立を上回るようになりました。歴史を振り返れば,ヨーロッパにおける大学勃興の基礎には都市の発展がありました。都市という地域社会の発展の上に大学が誕生するという姿は,本来の大学の姿かもしれません。その意味では,福山市立大学は設置者である福山市の発展とともに生まれたので,大学本来の姿を示していると言えましょう。

 大学は,学問の府です。みなさんは「学問の府」と聞いてどのような漢字を浮かべますか?「学問」は「学び問う」と書きます。「学び」から「問い」が生まれるのか,「問い」があるから「学び」が成り立つのか,それ自身研究が必要な課題でありますが,いずれにしても「学び」と「問い」とが併存していることが重要です。孔子は,「学びて思わざれば則ち罔し,思いて学ばざれば則ち殆し」と説いていますが,「思う」つまり思考するためにも問いは不可欠です。

 みなさんは大学入学に際してどのような問いを抱いていますか?問いに上下はありません。どのような問いでも,それを問い続けていく過程で広くて深い問いに至ります。たとえば,福山市の人口は何人でしょうか?これはみなさんが得意な問いです。インターネットで検索すると,すぐ答えが見つかります。福山市のホームページ(2017年2月末現在)を開くと470,713人と出ています。しかし,これはどのようにして数えたのでしょうか?ここにいるみなさんはその数に入っているでしょうか?少し考え始めると次々と疑問が浮かんでくるはずです。福山市が市制を施行したのが1916年で,そのときの人口は32,356人と言われています。3万人あまりから47万人へ,大きな人口増加ですが,どうして人口が増えたのでしょうか?人口が増えるためには,産業の発展が必要であり,また産業の担い手である人を育てる教育も充実しなくてはなりません。また,人口増加にしても地域の発展にしても,右肩上がりし続けるわけではありません。その過程には戦争や被災などさまざまな苦難の歴史もあったはずです。福山市は1984年に平和非核都市宣言をしていますが,それはなぜでしょうか?

 こうして問いを立て,考え続けていくと,なぜ福山市立大学には教育学部と都市経営学部とがあるのか理解できるかもしれません。福山市立大学の2学部は偶然並んでできたのではなく,2学部の必然性があったのです。

 もちろん問いを福山にまつわることに限定する必要はありません。私はこれまで発達心理学を研究してきましたが,「どうして人は大人になる前に子どもでなければならなかったのか」という問いを持ち続けています。人が進化し,人間社会が進歩してきたとすれば,それは人に子ども時代があったからです。その問いに答えようとすると,子どもはどのように生活し,遊び,学び,発達するのかを明らかにしなければなりません。そして,子ども時代の意義が具体的に明らかなればなるほど,教育の役割や地域社会のあり方を示すこともできるはずです。

 ぜひみなさんも問いを持ち,また持ち続ける価値のある問いを発見してください。1人10の個性的な問いを抱けば,新入生だけでも2,820の問いが生まれます。全学年合わせれば,1万以上の問いになります。1万の問いに充ちた大学は活気のある豊かな大学と言えるでしょう。問いの豊かさが大学の豊かさを示しているからです。

 さきに,大学は「学問の府」という話をしました。ここまでもっぱら学問について話をしましたが,「府」はどうなったでしょうか?鋭いみなさんは気になっていませんか?「府」は京都府や大阪府の府と同じで,人の集まるところを意味します。つまり,大学は教師と学生とが集まり自律的に運営するところから始まりました。さらに大学は多様な研究者や市民に開かれたところに発展しています。本学は,知の伝達,知の創造,知の発信をミッションとしています。きょう本学に入学されたみなさん,みなさんは学生であると同時に,児童教育学や都市経営学の研究集団の一員です。謙虚に学ぶと同時に,大胆な問いを育み,充実した大学生活を送ってください。

 以上,新入生のみなさんへの式辞といたします。

2017年(平成29年)4月4日
福山市立大学 学長 田丸 敏髙

学長の式辞

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