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学長の式辞

2024年度 学位記授与式式辞

(実施:2025年3月23日)

学位記授与式式辞

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 卒業生、修了生あわせて 二百五十二人の皆さんの輝かしい門出の時に当たり、福山市立大学の役職員を代表して、お祝いの言葉を申し上げます。
 ご卒業 誠におめでとうございます。
ご家族の皆様におかれましても、そのお喜びはいかばかりかとご拝察致します。心よりお祝いを申し上げます。

 本日はお忙しい中、福山市長 枝広 直幹(なおき)様、福山市議会 議長 今岡 芳徳(いまおか よしのり)様をはじめとして、ご臨席いただいき、また、大学および学生が日頃よりお世話になっている近隣4学区の自治連合会長の皆様にも、今回初めてお出で頂きました。
 来賓の方々に、この場をお借りしてお礼申し上げます。

 二〇一九年末頃から流行しはじめた新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、私たちの日常生活は一変しました。さらには二〇二二年四月に始まったロシアによるウクライナ侵攻、また、今年一月の停戦合意に至るまで、一年三ヶ月以上にわたる戦闘で四万六千人以上が犠牲になったパレスチナ・イスラエル戦争など、誰もが予想だにしなかったことが、現実社会で起こってしまいました。
 本日、卒業される皆さんは、まさにこうした激動の時代を福山市立大学で過ごしたことになります。この間、オンラインでの授業やクラブ活動の自粛など、不自由な大学生活にもめげず、今日の巣立ちの日を迎えられた皆さんに、心より敬意を表したいと思います。

 さて、福山には江戸時代後期に活躍した菅茶山という漢学者・漢詩人がいたことを、ご存じの方もおられるでしょう。現在の福山市神辺町の出身であった茶山は京都で学び、学業成って後、郷里に帰り子弟の教育に一生を捧げました。家の近くに「黄葉(こうよう)夕陽(せきよう)村舎(そんしゃ)」、のちの「廉塾」という私塾を設け、藩や身分を越えて集った多くの若者たちが学んだといわれています。その名声は全国に及び、有名な頼(らい)山陽(さんよう)もこの塾で学んだ一人です。
 菅茶山は、冬の読書のようすを次のような七言絶句の漢詩に残しています。

 雪擁山堂樹影深  雪は山堂を擁して樹影深く
 檐鈴不動夜沈沈  檐(えん)鈴(れい)動かず 夜沈沈(しんしん)
 閑収乱帙思疑義  閑(しず)かに乱帙(らんちつ)を収めて疑義を思う
 一穂青灯万古心  一穂(いつすい)の青灯 万古の心

 雪は我が山の家をうずめ、木々の影が深く黒々と見える。風もやみ軒端の風鈴も動かず、夜はしんしんと更けてゆく。静かに取り散らかした書物を片付けながら、(読んでいた書物の)疑問な点を考えている。(そうしていると)稲穂のような青白い灯火が、古えの聖賢の心を照らしてくれるのである。

 菅茶山の時代、情報を得る手段は、先哲が書き残した書物を読むことでした。そうして読書をしていると、数々の疑問がわいてきます。もちろんすべての疑問な点が解決されることはないでしょうが、ふとした時に、あっそうか、と気づかされることがあったのだろうと思います。

 今日、皆さんはスマホさえあれば、あらゆる情報を瞬時に得ることができます。便利な反面、真偽不明の情報もあふれています。こうした中で、何が正しい情報なのか、何が今の自分に必要なものなのか、時にはじっくりと書物に向き合い、沈思熟考をする時間を持つことも重要なのではないでしょうか。

 大学で学んでいた時には、先生方や職員の皆さん、或いは学友たちが適切な助言をしてくれたと思います。これから新しい社会の中に飛び込んでゆく皆さんには、これまで以上に多くの情報が入ってくるでしょうし、たくさんの疑問な点が生まれてくるでしょう。しかし、疑問に対する的確な答えがすぐに見つかるとは限りません。実社会ではむしろ正解が見つからないことの方が多いのです。そうした時にこそ、この菅茶山の漢詩を思い起こしてもらいたいと思います。

 皆さんは福山市立大学の第十一期卒業生となられます。昨年、開催した第一回のホームカミングデーには、福山市立大学の卒業生はもとより、前身校である福山市立女子短期大学の卒業生の皆様にもご参集いただきました。今年の秋も、「港(こう)輝(き)祭(さい)」に合わせて、第二回のホームカミングデーを開催する予定です。

 どうか卒業生の皆さんも、友人やご家族の皆様と一緒に、母校である福山市立大学にお立ち寄りいただき、先輩や後輩たち、また近隣の市民の方々と心置きなく語り合っていただければと願っています。

 最後になりましたが、思い思いの希望を胸に、羽ばたいていかれる卒業生の皆さんの前途を祝し、ご参集の皆様のご健勝を祈念申し上げまして、私の挨拶と致します。

2025年(令和7年)3月23日
福山市立大学 学長 佐藤 利行

学長の式辞

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